まだ朝の冷え込みが厳しい2月のある日。
最終出勤日が迫る事務のバイトでの出来事だった。

上長からの指示が降ってこなくなって久しく、ここ数日は先輩から頼まれたちょっとした仕事を引き延ばすことに努めていた。
そのため事務所で一人一台与えられたパソコンですることは、口を開くとすぐ政治の話をし出す上長もきっとそうして時間を潰しているのだろうネットサーフィンで。

この文章も職場で書いているので、私はおそらく上長と同じかそれ以上にこの仕事を舐めているといえるだろう。
ぬるま湯な環境のフルタイム経験を積んだとて、まともな会社に就職して役立つことは何一つとしてないだろうに。まあ、だからこのバイトだけ早く辞めるんだけど。

さて、昨日のインターン(リンク先R-18注意)で書いた記事がどうなっているか見るかな、なんて職場の回線で堂々とWebメディアのサイト名をアドレスバーに打ち込む。
すると検索結果の2番目に表示されたのは、インターンで見た覚えのある名前の人のものらしいサイトだった。

その人と面識はない。
そもそもインターンはフルリモートで、インターン生同士は名前とチャット内容でしか人となりを把握できない。そのうえ、その人は私がインターンを始める前に辞めてしまっていたらしく、チャットでどんな文体で発言していたかも分からない。

けれども、私はインターンで記事を書くにあたってその人の名前を見かけることが少なくなかった。
執筆を命じられた記事の参考にと過去記事を漁ると、高確率でその人の記事が出てきたためである。

その人の記事はちょっぴりドライだが明瞭で、私のようなひよっこWebライターがお手本にすべき内容をしていた。
記事数からしてそこそこの期間インターンをしていたことも窺い知れ、私は過去記事から数年越しに似たような内容の記事を書くことに親近感さえ覚えていた。

翻って、その人の個人サイトである。
その人はなんとWebメディアでのインターンを経歴としてだけでなく、仕事の成果物として大々的に発表していたのだ。
もちろんコタツでなく取材を伴うレビュー記事を並べていたので、そのあたりの感覚はあるらしい。
私が書く文章の文体や表現規則はすっかりこのWebメディアが定めているものに染まってしまったので、多かれ少なかれこのインターンに影響されることは分からなくもない。

しかし、上司ですら個人SNSをやっているかどうかであったのに、本名で個人サイトを立ち上げ、インターンの会社とメディア名も出しているのは驚きだ。許可は貰ったのだろうか。

そしてプロフィールを見ると凄い級の大学に通っていて、数年前、私がインターンを始めた同年に卒業していることが分かった。
パソコン講座(リンク先R-18注意)でその大学の学生の面接を担当したことがあるが、大学でやるような調査研究を高校の時点で経験している人が多く、それでいて明るい話し方で圧倒された記憶がある。

さらに、この人はMENSA会員らしい。結局何が凄いのかは知らないが、私の知るところではあの梅の精たちの声優の人も会員なのだから、とにかく凄まじいのであろう。

このサイト発注するのにいくらかかったんだろうなという、立ち返ってみるとお金で何とかなるものに有限の時間を使いたがる学生時代の人間らしい疑問を頭のどこかに浮かべる。それでも、アーティストのジャケ写みたいな本人写真といい、私のサイトの数倍おしゃれなデザインといい、私はこのサイトに圧倒されていた。

けれども、私はそれと同時にこの人が過去に取り残されているように感じた。
仕事の成果として並べている記事は当然ながら数年前のもので、大学卒業後は起業したらしいがサイト上にはそれ以降の活動が見当たらない。
プロフィールに記載されている年も2019年だか2023年とかで、これらの年が昔であることはようやく実感に変わってきたところだ。

起業後もWebライターとして食い繋いでいたようで、あるWebメディアではおすすめ起業スクール10選みたいな記事を書いている。
それは、インターンでは各記事の末尾に入れることがあった程度のアフィリエイトそのものだった。
SNSの広告で見かけるAI副業の起業版でもあるのだろうか、見えない背中を見せてきていたあの人は、そんなものに騙されてしまったのだろうか。

Instagramは本人・起業した会社のいずれのアカウントも昨年の半ばを最後に止まっており、この人の今を知ることはできない。

そして、いつまでもひよっこだと思っていた私も、来月の大学卒業とともにインターンを終える。Webメディアにこの人の名前の記事が残っているように、私の記事も過去のものとして下へ下へと薄れていくだろう。

このポエムみたいなページも同じで、時計の針が進む以上、過去の一地点で語られた視点を未来の人が完全に理解することは難しい。
私自身、これは福岡の梅の精が復活してまだ半年だったころに書き散らした文章なんだなと、近い将来懐かしむに違いない。

これに対抗するには、やはりサイトを更新し続けるしかない。すなわちインターネットの海での活動を続け、その報告を残し続けるということだ。

でも、昔の痕跡を見ることができるのに、直近まで活動していることが分かる人のサイトが一番キモいんだよな。